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「東芝崩壊」傲慢・怠慢・無責任にひた走る日本企業の難病 会社を維持する以上に「大切なこと」(現代ビジネス)

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●東芝の崩壊や元東京都知事の記者会見を例に、重大問題が発覚すると自己の保身と責任逃れにひた走る最近の権力者や大企業トップ達の傲慢・怠慢・無責任体質に警鐘を鳴らす記事です。

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■東芝崩壊と犠牲者たち

自分が権力の座にある時にはやりたい放題やっておきながら、その後、ひとたび自分がやったことに関連して何か重大問題が発覚すると、自己の保身と責任逃れにひた走る――。

3月3日に執り行われた石原慎太郎元東京都知事の記者会見を見ていて、このような見苦しい光景を残念に思ったのは私だけではないだろう。

しかし、ここのところ、この国で同じような光景を目にする機会は少なくない。

2011年の東日本大震災に伴う福島原発災害に際しての東京電力経営陣や当時政権与党であった民主党内閣の不甲斐ない対応もそうだったし、2015年に発覚した東芝の粉飾決算を陣頭指揮した3名の社長経験者たちの態度もそうだ。

周知の通り、東芝では同年、約13億ドル(当時のレートで約1100億円)にのぼる買収子会社米ウェスチングハウスの減損隠しも発覚した。

今回、やはりウェスチングハウスに関連した7000億円を超える巨額損失の発覚によって再び苦境に立っているが、2015年の粉飾決算や減損隠蔽の発覚は、東芝崩壊の序章に過ぎなかったということだろう。隠れ損失は他にもまだあるのではないか、という疑念も拭えない。

粉飾決算による経営不振からの建て直しや社内改革を期して、再生のトップリーダーたる会長職に選ばれたのは、驚くことに、減損隠蔽の舞台となったウェスチングハウスを含めた原子力事業の総責任者であった志賀重範氏であった。

結局、志賀氏は今回のさらなる損失発覚で会長を引責辞任したが、もともと大きな疑問符が付く人事だった。この人事を断行した社外取締役からなる指名委員会の委員長を務めた小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長は、志賀氏のことを「余人をもって代え難い」とコメントしていたが、自分たちの責任をどう感じているのだろうか。

本来、責任を取るべき立場にいる人たちがことごとく責任逃れをしたり、だんまりを決め込んだり、雲隠れしたりしている一方で、その人たちの甘く杜撰な行動の責任を取らされるのは、往々にして、まったく無関係な現場の人たちというのも相場が決まっている。

東芝の場合には、半導体と原子力に次ぐ第三の柱とも位置付けられていた成長株の医療関連事業が、真っ先に、経営再建のための売却ターゲットとなり、医療機器子会社の東芝メディカルシステムズはキヤノンに売却された。同子会社売却に伴い、東芝本体で医療関連事業を担当していた社内カンパニーも廃止された。

医療機器子会社のキヤノンへの売却交渉が大詰めを迎えていた昨年3月、当事業に携わってきた東芝の社員が、取引先企業を一社一社訪問して、事業終了について説明して回っていた。

そこには、「事業は黒字でした。我々としても青天の霹靂で、本当に残念です」と悔しそうに頭を下げる担当者の姿があったという(毎日新聞経済プレミア「東芝問題リポート『東芝カンパニー廃止でバラバラになる社員の悔しさ』2016年4月1日」)。

東芝本体で医療関連事業に携わってきた社員たちは、早期退職プログラムや再配置の対象とされた。かくして、高齢化が進む中で今後の成長が期待される優良事業は、歴代経営トップの不始末や不採算事業の犠牲となったのだ。

東芝は、同時期に、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電事業も中国の家電大手「美的集団(マイディア・グループ)」に売却している。自分たちには何ら落ち度がなかったにもかかわらず、突如整理の対象となって売り飛ばされた事業に携わっていた現場の社員たちの悔しさは察するに余りある。

売却先に移ることになった人たちには、まさに「晴天の霹靂」であったかもしれないが、完全崩壊が始まった東芝からいち早く脱出することが出来て、むしろ幸運であったと気持ちを切り替えて新天地で奮起して欲しいと願う。

■将来有望な優良事業を救い出せ

今回、債務超過が回避できない深刻な状況に再び追い込まれた東芝にとっての次なる売却対象が、稼ぎ頭のNAND型フラッシュメモリーを擁する半導体事業だ。

NAND型のフラッシュメモリーは、今やありとあらゆるデジタルデバイスや、クラウド時代を支えるサーバー用のストレージとして不可欠なものだが、東芝が世界に先駆けて商品化したコアデバイスだ。

100%売却すれば、2~3兆円程度の価格になるともいわれており、入札には10社近くが名乗りをあげたようだ。その中には、NAND型の製造で東芝とも関係の深いサンディスクを傘下に収めたウエスタンデジタルなどの順当な候補に加えて、シャープを買収したホンハイの名前もあがっている。

裏話になるが、私は、ソニー本社の技術戦略スタッフとして働いていた30代前半の頃、このNAND型フラッシュメモリーの将来性に目を付け、サンディスクへの資本参加または同社との業務提携を当時のソニー経営陣に進言し、その実現に向けて奔走した経験がある。

そのため、NAND型フラッシュメモリーやサンディスクの創業者であるエリ・ハラリー氏については、さまざまな思い出がよみがえる。結局、その時のソニーは、NAND型フラッシュメモリーへの本格投資には踏み切れなかった。

東芝が、医療関連事業に続いて、半導体事業のように、一連の不祥事とは何の関連もない優良事業を、不祥事の尻ぬぐいのような形で売却しようとしていることについては、前述のような感傷を禁じ得ない。

しかし一方で、日本が世界トップクラスのシェアを維持するこのようなビジネスがこのまま東芝の内部に留まり駄目になっていくよりは、これを機会に切り離されて身軽になる方が、産業振興や雇用確保の面からははるかに望ましいとも感じている。

IoTやクラウドの時代を迎え、NAND型フラッシュメモリーには、引き続き大きな将来性がある。

そもそも、素早い決断やアクションが求められる半導体ビジネスを、何のシナジーもない重厚長大なエネルギー事業などと一緒にくくっておく必要などどこにもない。デジタル家電事業の競争力低下やその見直しと共に、半導体事業の売却や独立分社化は、今回の件とは無関係にもっと早くから実行されていてもよい選択肢だったと思う。

東芝といえば、石坂泰三や土光敏夫など、かつては、我欲を超越したスケールの大きな経済人を輩出してきた日本が誇る名門企業の一つだ。そんな企業がここまで凋落し、崩壊していくことは残念なことには違いない。しかし、ここで大切なことは、「会社」という枠組みを維持することではない。

本当に大切なことは、ウェスチングハウスという最悪の不良債権を自ら抱え込んだ挙句、一気にメルトダウンが進んだ母屋から、一刻も早く将来有望な優良事業を救い出すことだ。もはやこうなった以上、そう割り切るしかないだろう。

東芝の問題は、多くの日本企業にとって、決して対岸の火事ではない。冒頭に述べたように、権力者や大企業の傲慢、怠慢、無責任体質は日本のあらゆるところにはびこっている。シャープや東芝の事例は、その他すべての企業の経営者や従業員にとって、自己変革を急ぐ教訓としなければならないものだ。

現状にタカをくくり、問題解決の先送りやその場しのぎでお茶を濁し続けている企業にとっては、明日は我が身と知るべきであろう。

(現代ビジネス)

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