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●「アリコ狩り」、そう呼ばれている10月3日に開始したメットライフ生命保険の早期退職プログラムについての記事です。
アリコ狩り──。そう呼ばれているのは、10月3日に開始したメットライフ生命保険の早期退職プログラムだ。
歩合制の営業社員を除く内勤社員約4800人のうち、対象となるのは都内勤務の45歳以上でかつ在籍3年以上の社員、そして会社が不要と判断した社員だ。関係者の話を総合すると、その数は350~400人で、対象者の多くが旧アリコジャパン社員となる。
というのも、リーマンショックで危機に陥っていた米AIG傘下の旧アリコを、米メットライフが買収したのが2010年。となれば、旧アリコ社員を対象としているのは明白だ。
理由は、旧アリコ時代に比べて格段に稼げなくなったことに慌ててようやく着手した組織再編とコスト削減。そして、サシン・N・シャー社長による旧アリコ時代のビジネスモデルの徹底排除だ。
旧アリコのビジネスモデルは、部門間で競い合わせながら、高額なインセンティブを武器に契約を獲得しまくって、後に回収していくというもの。そうやって業績を挙げてきたが、この手法はシャー社長の意に沿わなかった。
そこでシャー社長は、役員の大半を入れ替えただけでなく、保険業界とは無縁の人物を次々に採用していった。それぞれに実績がある人物とはいえ、社内は大混乱。ましてや、役員として入社したにもかかわらず、数カ月後に辞めていく事例が頻発する始末だ。
現場を指揮している幹部の多くも嫌気が差し、同社を去っていった例は数知れない。その状況は、いまだ何ら変わっていない。
手法の是非はともかく、旧アリコは、現地の習慣やビジネスに徹底的に合わせるAIGの手法にのっとり、実績を挙げてきた。それを破壊したものの、新たなビジネスモデルを構築できずにいるため、業績は下降線をたどる一方だ。
● 手数料開示で一悶着
「シャー社長はきれい事を言うばかりで、日本のビジネス慣習に合わせる気などみじんもない」
現役幹部や同社を去った多くの幹部たちは、口々に言う。
実際、今年、金融業界で最も話題となった保険の手数料開示問題。ここでも、「開示した方が、イメージがいい」という理由だけで、シャー社長は早い段階から開示を主張し、落としどころを探っていた他の生保と一悶着あった。
高額な手数料を是とする気は毛頭ないが、いかにもな話だ。
また、今回のリストラ策にしても、日本での業績が一向に上がらないことから、米国本社がリストラ部隊を送り込んできたもの。慌てて「成長に向けた変革」と銘打った、組織再編を行うとしているが、現場の実情を見ることなしに、これまで放置してきたツケが回ってきたにすぎない。
今回の早期退職制度の導入は、メットライフの終わりの始まりかもしれない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)