◆50代・60代向け起業に関する記事です。メインは定年退職者の方向けの内容となっていますが、「起業にあたっての3つの注意点」などは起業を志す各世代にも共通したポイントとなっています。
【定年予備校】50代の多くは企業や団体に雇われている給与生活者だ。給与のありがたさを実感すると同時に、会社や上司からの厳しい指示に従わなければならない辛さもある。そのため、定年後も仕事を続けたいが雇われる生活からは逃げ出したい、と自分の裁量で働いて収入を得る「起業」を目指す人もいる。
特に最近は、役職定年制の普及で給料は減額、転職も思うようにならない。起業への憧れは募るばかりだ。一方で、普通のサラリーマンには起業に関する情報やノウハウが少なく、そう簡単には起業できないと考える人も多い。
日本政策金融公庫総合研究所「2015年度起業と起業意識に関する調査」の「50代、60代の起業予備軍の実態」によると、起業予備軍の年収は100万円以上500万円未満が47%。収入は予想外に少ない。
ただ、起業にあたって最も重視することは収入40%、やりがい35%で、収入とやりがいの2つが拮抗(きっこう)している。起業は単純にお金のためだけではないということだ。
身近に起業経験者がいるという人は49%とそれなりに多いが、起業・経営に関する授業を受けた経験は26%と低く、相談できる相手がいないという人は58%にも達する。起業準備にあたって会社から得られるものは「製品・商品・サービスに関する知識」が24%、その他が10%台と低く、現在の会社にはあまり頼れないようだ。また、開業費用の見込み額は100万円未満が52%、100万円から500万円未満が27%で、費用はかけず小さく起業しようと考えている人が多い。
この調査結果だけをみると、仕事をしながら起業準備をするのは大変だと思う人もいるだろう。だが定年後、希望の仕事に再就職するのはなかなか難しいのも現実だ。
中小企業白書2014年度版によると、12年の起業家は年代別で50-60代以上が46・7%にも達している。国や地方自治体が起業を積極的に後押ししていることや、起業を支援する組織や会社も増えていることなどから、意欲のあるシニアが起業できる機会は確実に増えているのだ。
そこで、定年後の起業で注意しなければならない「3つのこと」をまとめてみた。第1は「自分の能力を過信しないこと」、第2は「無理な投資はしないこと」、第3は「小さく生んで大きく育てる気持ちが大切である」。
現在の勤務先で起業のヒントを得たとしても、それは勤務先の資金力やブランド力、営業力があってこそ可能なものかもしれない。会社を離れて同じことができるかどうか冷静に考えたい。また、定年後の起業は少ない投資で着実に拡大することがなにより重要である。
(夕刊フジ)