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道義なきリストラは最大のパワハラだ 「ローパー」と呼ばれる人たちへ(BLOGOS)

最近報道された各種報道の中からリストラ関連NEWSをピックアップしています。

リストラのやり方が合法的かどうかについての考察記事です。
日本の雇用では、「温情」が省かれるとパワハラにつながりかねない、最悪なのは経営の利益が絡んだもので非合法的なリストラだ、との指摘です。

■リストアップされた「ローパー」たち

数年前、大企業の「追い出し部屋」というのが問題になりました。新規事業立ち上げとか自らの転職・出向先探しを名目の仕事とし、従業員を退職させるための部屋です。この部屋は、何人かの追い詰められた社員が集められました。彼らは精神的に疲弊し、圧迫され、望みが萎えていき、やがて会社を去ることになりました。それでも部屋の中にいたのは「同志」でもあったので、法的に「決起」することもできました。実際、違法な退職強要として裁判に持ち込まれた例もあります。

ところで、「お前だけが駄目な社員だ」と暗に言われると、その人は社内すべての人間を敵だと思ってしまいます。いや、逆に周りがすべて正義で、自分だけが悪だと思い込んでしまうでしょう。この人たちは今、「ローパー」(ロー・パフォーマー)と呼ばれています。評価ランクDからEの最低評価の人たちだそうです。

この社員たちは、行動を起こすことすらできなくなります。なにしろ、自分だけが駄目人間であると思わされているからです。じつは、隣に座っている人間も同じように退職(解雇)の圧迫を受けていたりしても、どちらの人間もそれを知らされずにいるから、互いに相談し、結託し、決起することができません。これは「追い出し部屋方式」に対して「リストアップ方式」と呼ばれています。リストアップした社員を、1人ずつ追い込んでいく。中には精神的に追い詰められて「うつ」にかかる人も珍しくありません。

■4人を残すために、1人を切るのは合法的か

今回話題となった王子ホールディングスの子会社の場合、赤字経営だったというから、リストラは当然しかるべきことでした。ここで問題となるのはそのリストラ手法です。人材会社と組んで、退職強要の指南を受けて、会社側は厚労省から助成金をもらっていたということです。

「会社に残る多くの従業員を救うためには、できの悪い従業員は排除してかまわない」

この考えは、功利主義的な考えに似ています。つまり利益の結果を重視するべきだということです。経営的に考えれば、会社の存続が危うくなればリストラは当然必要となってきます。優秀な人間や若くて将来性のある人間を残すために、能力的に劣った人間や老いた人間に去ってもらうのは仕方ありません。言葉は悪いですが「ローパー切り」はやむをえないのです。5人いたら、もっとも使えない1人を切り捨てて、4人に残ってもらうしかない。それが経営の効率化です。

ただ、そのやり方が合法的なのかという問題が出てきます。合法的でないから非道徳的、非人間的という問題を引きずってくるのです。ここでは、今回問題になった退職強要で助成金をもらう仕組み自体が合法的かどうかということを論議するつもりはありません。どこからが非合法なのかの線引きも難しい。本稿ではその仕組み自体のことではなく、社員に対するリストラそのもののやり方(社員との関わり方)が合法的かどうかということを論じたいと思います。もっとも、法律的にどうのという以前に、個人を孤立させて追い詰めていくやり方がどうにもやりきれない思いがしないでもありません。

■リストラ指南の評価そのものが恣意的では?

ちなみに、日本では整理解雇は一定の合理的要件を満たさなければならないことになっています。これに対しては、リストアップ方式でもちゃんと合理的に評価していたという反論があるでしょう。リストラ対象として挙げられていたのは、指南書の評価では最低ランクにいる人たちです。実際、こんな評価の社員がいれば、経営者なら誰でもその人に辞めてもらいたいと思って当然です。しかし、この指南書による評価方法そのものが恣意的ではないかという疑問が残ります。「辞めさせることが前提にありき」だったとすれば、いくらでも会社にそぐわない社員(必ずしも劣った社員とは限らない)を、そのダメ評価に合わせてリストラ対象者をパズルのように当てはめていけばいいわけです。

日本的雇用慣例では、「著しく能力が劣っていて、改善の見込みのない者」については解雇対象となりますが、その査定のもととなる評価に客観性と中立性が必要です。さらに、本人への指導や目標設定、他部署への異動によってもパフォーマンス向上が無理なら退職勧奨もやむを得ないことになります。このあたりは、我が国の終身雇用制度に護られた、外資系企業から見れば「ゆるさ」であり、日本的温情でもあります(再就職支援まである!)。この温情が省かれると、パワハラにつながりかねないのです。

■人間の本性はもともとパワハラだ

人間というのは、もともとパワハラ的な精神構造を持っているということが心理学実験でわかっています。強い立場に置かれた人間は、弱い立場の人間を虐げたくなるという本性があるというものです。よく知られた実験では、もともと無関係で対等な人間を被験者として募集し、被験者たちを任意に半分に振り分けます。片方のグループを「看守」役、もう一方のグループを「囚人」役に分け、それぞれのグループの人間にはその役になりきってもらう。数分のうちに「看守」は「囚人」をいたぶり、傲慢となり強権的な態度を取り出します。「囚人」は怯え、いじけ、卑屈になり口も利かなくなりました。なじる「看守」の目と、すがる「囚人」の目の交差。それは役柄ではなく、本性です。つい数分前、対等の人間として入って来て、一緒に実験の説明を聞いていた人たちなのに、です。

■非合法なリストラは最大のパワハラとなる

このことからもわかる通り、会社でも「辞めさせる人」と「辞めさせられる人」という立場では、画然とした力の関係が現れます。最大・最悪なパワハラは、経営上の利益が絡んだ力関係によるものです。すなわち、非合法的なリストラです。リストラする側の者は、組織からその力を与えられた剛腕猿のようなものです。肉体的な暴力は振るわないが、精神的な暴力の剛腕を振るう。利益を上げられない部署では、会長、社長、部長、課長、係長、担当者へと、上位者から下位者へと力が流れ、ハラスメントが起こります。

―― チャレンジだ!

東芝の不正会計に見られるように、歴代社長による絶対的利益追求(じつは数字上の不正)のこの言葉が下りて来たら、それは誰しも脅威となって、下層へ、下層へと向かって大きなパワハラとなります。これはリストラと同じ構造です。

■経営に道徳観は必要だ

確かに能力的に低い者、評価の低い者から順に会社から排除されていくのは、経営上からすれば仕方ないのかもしれません。であれば、やはり合法的にまず手を尽くしてほしいわけです。経営上のリストラに道徳観のようなものを持ち込むと嫌がられるのを承知で言えば、道義があれば、合法的になるはずなのです。したがって、現代の経営では道義も必要であると思わざるを得なくなります。

リストラに道義を持ち込めないなら、それは非合法となり、強力なパワハラとなるのが見えてきます。4人の人間を残すために1人の駄目な人間を切るという場合、経営上の問題だけで片付けようとすると、法律上の問題、道徳上(倫理上)の問題が残ることになります。

(BLOGOS)

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