リストラ対象はなぜ「45歳以上・管理職・中高年スタッフ職」なのか
景気は上向きつつある一方で、国内・国外の激しい競争にさらされている企業の人員削減の動きが始まっています。リストラの最もポピュラーな方法は「希望退職募集」ですが、単純に辞めたい人が手を挙げればそれですむというものではありません。
なぜなら残ってほしい優秀な社員が手を挙げ、本当は辞めてほしい社員が応募しなければ会社にとって大きな損失です。そのため事前に対象者全員と上司が個別に面談し「退職勧奨」と「慰留」工作を行います。ただし、上司は労務のプロではありません。そこで面談の研修を行います。某IT企業の人事部長は言います。
「上司は長年仕えてくれた部下に引導を渡すのは心情的にもつらいものです。やり方を間違えれば、本人が激高し、収拾がつかなく事態が起きる可能性もあります。そこで確実に目的を遂行するために、部長以上の面談担当者を集めて、1日かけてロールプレイによる研修を実施しています」
リストラ候補者の選別基準は昔も今も「会社への貢献度が低く、将来にわたっても成長性が見込めない社員」です。人選は人事考課がベースになりますが、会社の方針や考え方によって対象者も異なります。近年は海外移転や国内事業の廃止にともない、たとえパフォーマンスが良くても事業と一緒にリストラされるケースも増えています。
ターゲットになりやすいのが中高年社員。某メーカーの人事担当者が言います。
「年齢的に45歳以上です。人件費が高くて切りやすいのが管理職。事業規模が小さくなるとマネージする人はそれほどいらなくなります。その次は中高年のスタッフ職。年功制が残っているため彼らの人件費は相対的に高いからです」
最近は候補者の年齢を40歳以上、35歳以上と下げる企業も増えています。ターゲットはバブル期入社組と指摘するのは某IT企業の人事部長です。
「40代前半のバブル入社組の数は依然として社員の中でも突出しています。しかもポスト不足の中で昇進できない社員が数多く滞留しています。40歳を過ぎても管理職になれない社員は狙われやすいですね」
出世できなければリストラの対象になる。ミドル層にとっては受難の時代です。
(PRESIDENT Online2015年7月9日掲載記事より抜粋、加筆・修正)